TORQUE LIMITER
スリップクラッチとは、主軸と従軸の間に使用し、回転力を伝達する機械機構のことです。動力伝達中に、従動軸側が過負荷状態になった時にスリップします。トルクリミッタの役目として設備の損傷を防ぎます。設備の過負荷防止が目的です。
本体の一端を受け(受板)とし、摩擦板外板・摩擦板内板・摩擦板外板(外板2枚の場合)が交互に入り、次に摩擦板押板・コイルバネ・バネ押板・調整ナット(セットネジ付)の順に組込まれ、必要に応じて調整ナットの締込みにより所要のトルクが得られるようになっております。従って摩擦板は常時圧着状態となっています。
トルクリミッターは、日本語でいうと「過負荷保護装置」です。モーターなどの駆動装置と動作部品の間に取り付けられ、設定トルク内での駆動時はトルクを伝達し、設定トルクを超える場合は何らかの機構によりスリップすることで伝達トルクを遮断するのがトルクリミッターの役割です。トルクリミッターは、機械の破損や人災を防止する目的で産業機械などに組み込まれます。
過負荷によって伝達トルクを遮断したのち、通常トルクに戻った場合は元通りに復帰する「自動復帰機能」が備わっているものが一般的とされています。
トルクリミッターの機構によっては、復帰時に出力側と入力側の位置関係を元の位置に戻せるものもあります。そのため、位置精度がシビアな工作機械などにもトルクリミッターはしばしば活用されます。反対に手動復帰が求められるものもあり、用途によって使い分けます。
また、乾式多板摩擦式のトルクリミッターのことを、スリップ・クラッチと呼ぶこともあります。
トルクリミッターの機構には様々な種類がありますが、代表的な機構について簡単に解説していきます。代表的な機構の種類は以下の3つです。
ボールラチェットタイプは、スプリングなどで圧接されたボールとボールポケットがはまり合うことでトルク伝達ができるタイプを指します。
ボールとボールポケットでの位置決めになるため、設定トルク精度が高く、微調整も用意です。また、復帰時の位置精度も高いという特徴があります。正転、逆転を繰り返すような動きをする場合においても、バックラッシが小さく扱いやすいのが特徴です。
反面、機構が大きくなりやすいので設置スペースに余裕が無いと組み込みにくいというデメリットがあります。
摩擦式タイプは、ボルトやスプリング(巻きバネ、板バネ)で2枚の摩擦板を加圧し、摩擦板の摩擦力でトルク伝達をします。過負荷がかかると摩擦板が滑ってトルク伝達を遮断します。
この機構の最大のメリットは、機構をコンパクトにできるという点です。狭い部分に組み込みたい場合において活躍します。さらに、部品点数の少なさから、安価で利用できるので価格重視という場合においても活躍するでしょう。
基本的には、過負荷が解消された後に自動復帰をしますが、復帰時の復帰位置精度は期待できません。また、バックラッシの発生もあるので、正転、逆転が繰り返されるような用途で位置精度を求める場合には適しません。
摩擦式タイプでは、摩擦板の摩耗がどうしても発生するので、定期的な部品交換や摩耗粉の清掃が必要になります。しかし、摩擦板の交換をすれば再利用できるメリットがあります。
あまり普及はしていませんが、永久磁石を利用した非接触式のトルクリミッターもあります。
非接触タイプは、摩耗や摩耗による塵の発生がないのがメリットです。摩耗による劣化が無いので部品交換をできるだけしたくない場合などに最適でしょう。ただし、磁力があるため、磁力に弱い製品などへの利用には向きません。
トルクリミッターが使われる分野は幅広く、身近な部分ものだとコピー機の給紙機構、ロックナットスパナなどのしめすぎ防止機構などに採用されています。
産業機器では、製造機械のチェーン駆動部、ロボットアームの関節保護などがあげられます。
トルクリミッター
トルクリミッター分解写真