POWDER
粉末冶金(ふんまつやきん)とは、粉末にした金属を金型に入れて押し固め、高温で焼き固めて製品を作る加工技術です。粘土を成形して焼き固める「陶芸」と粉末冶金の工法はよく似ています。
粉末冶金の発祥は今から約5千年前と言われています。粉末にした鉄を焼き固める粉末冶金を用いることで、鉄をドロドロに溶かす技術がないにもかかわらず鉄器を製造できたのです。
現在では、鉄以外にも様々な金属で粉末冶金の技術が用いられるようになり、現代の産業を影で支える技術となっています。
粉末冶金では、金型を用いて粉末材料を圧縮し固めるため、複雑な形状であっても追加工なしで加工ができてしまいます。ただし、材料粉末の流動性により製造できる形状に制限が出る場合もあるので技術者と相談の必要があります。
また、粉末冶金では金属を完全に溶かす必要がないため、融点の高い金属であっても加工ができます。
加えて、材料を削って成形する必要がほとんどないため、切削の難しい硬い金属を複雑な形状に加工するのにも最適な工法です。
さらに、材料が粉末であることから加工中にほとんどロスがでません。材料価格の高い金属を取り扱うのであれば、ロスが少ないという点は大きなメリットになるでしょう。
粉末冶金では、粉末材料を製品形状に固める必要があるため、金型を作成する必要があります。切削加工などに比べるとイニシャルストが高くなってしまうので、少量生産には向きません。
粉末冶金は大型製品や肉厚製品の加工には適しません。焼結の際に材料が縮む場合があり、大型、肉厚の製品の場合、寸法が大きく変わってしまう場合があります。
また、粉末冶金では製品形状によっては粉末の圧縮具合にばらつきがでる可能性もあります。
粉末冶金でよく利用される材質には、
などがあげられます。
また、上記の材質を主材料とした合金などにも粉末冶金はよく利用されています。
その他、炭化タングステンや炭化チタンなどのセラミックス素材とニッケルやコバルトといった金属と混ぜ合わせて利用する場合もあり、このような材質を「サーメット」と呼びます。
従来とは違った素材を金型に使用することで、セラミック素材の粉末冶金用の金型を実現しています。金型の設計には強度と耐熱性を考慮しております。
・歯車
複雑な形状でも量産性に優れる粉末冶金では、歯車などの機械部品の製造によく利用されます。自動車のクラッチ部品や、プリンターの紙送り機構部品など、幅広い分野で粉末冶金を利用した歯車が活躍しています。
・含油軸受
粉末冶金ではどうしても製造状内部に気功ができてしまいますが、その気功に油分を含ませると、潤滑性の高い軸受を作ることができます。軸受の摩擦抵抗を少なくしたい場合や、耐摩耗性を高めたい場合などに粉末冶金を利用した含油軸受は利用されます。
・切削工具
切削工具には粉末冶金が最も適した加工方法として知られています。切削工具では切削効率を高めるための複雑な形状と、優れた耐摩耗性や耐熱性などの両立が求められます。
そのため、粉末冶金で切削工具を加工する場合は、硬度が高く、耐熱性に優れたタングステン合金や炭化タングステン、サーメットなどが利用されます。これらの材質に金属バインダー(コバルト、ニッケル、鉄など)を少量添加して靭性を高める場合もあります。